地方の病院がなくなる
平成18年9月15日
 小児科や産婦人科の医者がいないことが問題になっているが、これは医療危機の序の口だ。これからは地方の病院そのものがなくなるのだ。病院の病床は一般病床と療養病床に区分され、地方の病院の多くは病床数が100前後で、医療制度のうえでは療養病床といわれるものがほとんど。この病床は全国で38万病床、このうち医療保険適用のものが25万病床、介護保険適用が15万病床。この38万病床のうち15万病床だけを医療保険適用の病床として存続させる計画。この計画に沿って病床を分類し、診療報酬もすでに18年7月から見直されている。この結果、病院を維持することが難しく、廃止を決めた病院もあり、数年以内には18万病床が全国から消える。

 滋賀県 高島市内の公立を含め3つの病院関係者で構成する高島地区病院連絡会の勉強会が9月9日に高島市で開かれた。ここには高島市当局と 大津市 内の1病院の関係者も出席して療養病床主体の病院の今後をどうするかの協議が行われた。このままの情勢ではこの地域から病院がなくなるとの危機感があった。どういう危機かを数字で示すと、80病床の病院の例で、前年に較べて25%ほど収入が減少する。それは療養病床の診療報酬が激減するからだ。ほとんどの療養病床では入院基本料が1日に つき10 , 800円→7 , 640円となる。つまり入院基本料が介護病床の7,820円より低くなるという診療報酬が逆転するような見直しが当然のように行われたのだ。

 北海道 や 福岡県 等で以前から社会的入院ということが指摘されてきた。医療としては 大した ことをする理由がないのに自宅にいるより病院にいたいということで入院している。これが医療費増大の根源というわけで、いろいろ手を打ってきたが思うようにいかない。そこで、その温床ともいうべき療養病床を抱えている病院をなくしてしまおうというのだ。

 しかし、元はと言えば、社会的入院に対抗するために療養病床という制度を作り、これに誘導してきたのは厚生労働省と都道府県だ。 滋賀県 のある病院は昨年、県の勧めで療養病床を2倍以上にする許可を取り、施設の拡大中という。今現在は頭を抱えている。こういう無茶苦茶がなぜ起るのかといえば、首相直結の経済諮問会議が医療の実態を無視し、異論を唱えるのは一部の利権集団として一蹴したからだ。

 地方から病院が消える事情はこれだけではない。近畿の各地域で京大病院など水準の高い国立大学病院が看護師の募集に歩いている。最近は東大病院まで近畿各地域に手を伸ばしている。何故か。国立大学が大学法人に組織替えしたのに伴って、付属病院も収入の拡大を図るため業務拡大に動きだしたからだ。地方の病院に勤務する看護師だけでなく、自己の病院のための看護師養成施設からも国立大学病院は看護師を引き抜いていく。その他の医療技術者の養成学校にも異変が起きている。東京や大阪に大規模な養成施設が認可されつつあり、こうなると地方の病院は医者や看護師だけでなくその他の医療技術者を確保できなくなる恐れがあるのだ。

 小泉改革の5年間は地方の経済を疲弊させただけではない。規制緩和も加わって地方の医療を破壊しつつある。この流れに反対する者は利権集団にくみする守旧派と呼ばれる恐れがあり、事態は大きな声が出ないだけに重症だ。


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