共謀罪という新しい刑罰の賛否をめぐって数年間続いた国会審議が山場を迎えようとしている。共謀罪は、平成12年に「国際的な組織犯罪の防止に関する国際連合条約」で各国が国内法で共謀罪の規定を設けることを義務付けられているものである。日本もこの条約を平成15年に国会で承認したものの国内法である「国際的な犯罪の処罰及び犯罪収益の規制等に関する法律」を改正して共謀罪の規定を新設する段階で慎重な取り扱いを求める声が出され今日にいたっている。
なぜ慎重論があるかといえば、共謀罪とは犯罪行為を実行しなくても複数の者で共謀するだけで刑事責任を追及できる、つまり犯罪行為をしようと思っているだけで「御用だ」とされてはかなわないということにある。ただし現行の法律にこういう規定がないわけではない。例えば刑法の内乱罪の規定では、「首謀者は、死刑又は無期禁固」、「謀議に参与した者は無期又は3年以上の禁固」、「内乱の予備又は陰謀をした者は、1年以上10年以下の禁固」となっている。ここには「首謀」、「謀議」、「陰謀」の表現があるが、心の内を刑事責任の対象としているのではない。問題になっている「共謀罪」も同じである。
国連が条約で共謀罪を設けることとしたのは、テロリストの集団や暴力団が組織的に行う犯罪行為を抑えるには、犯罪行為の実行者だけでなく謀議に関与した者も処罰する必要があるからだ。例えばオウム真理教のサリン事件やニューヨークの貿易センタービルのテロ事件でも実行犯だけでなく謀議に関与した者の責任を追及するのが当然との考えだ。
しかし共謀罪に関する条約の規定やこれに基づく組織犯罪の処罰法改正の政府原案の規定では共謀罪の適用範囲が拡大解釈される恐れがあるとの理由で、衆議院の法務委員会の審議において修正案の協議が続けられている。どういう点が問題になっているかというと、
・ 共謀罪は「団体」の活動として行われるものの遂行を共謀することで成立するとされているが、「団体」を犯罪集団に限定するようにすべきではないか。
・ 共謀罪は犯罪の合意だけで成立するとされているが、犯罪の実行に資する行為が行われた場合に要件を限定するというのでは不十分で、さらに要件を絞って予備行為が行われた場合に限定すべきではないか。
・ 共謀罪は死刑又は4年以上の懲役ないしは禁固の刑に当たる重要な犯罪を対象としているが、これだと日本の法律では615の犯罪が対象になるのでもっと対象となる犯罪を絞るべきではないか。おおよそこのような点が問題となっている。
5月11日現在では、これらをめぐって修正の合意ができるかどうかの段階にあるが、考え方の違いはあるものの実際には大きな違いではないのではないか。そうであるならば出来る限り合意する努力をすべきだと思う。 |