北朝鮮の核実験は周辺事態か
第67号 (H18/10/23)

 北朝鮮が10月9日に行った核実験は日本の周辺事態法にいう周辺事態に当たるのかどうかが問題となっている。

 10月25日に国連安全保障理事会が行った北朝鮮制裁決議で大量破壊兵器はもちろん通常兵器に関連する物品や技術を北朝鮮に移転することを禁止している。この規定の実行性を確保するため決議8項(f)で「国連加盟国は、自国の国内法上の権限及び国内法令に従い、かつ国際法に適合する範囲内で、必要に応じて、北朝鮮に出入りする貨物の検査などを通じた協調行動を取ることが要請される。」としている。

 これは当然の規定だ。ところが貨物の検査をする根拠法令としては、「周辺事態に際して実施する船舶検査活動に関する法律」しかない。この法律を適用するには北朝鮮の核実験が「周辺事態」に当たると言えなければならないのであるが、「実験」が直ちに日本の安全を脅かすと断定するには無理がある。

 それでも政府与党は「周辺事態」に当たると言っている。そこで10月18日の衆議院の党首討論会で民主党の小沢党首は安倍首相に「日本が直接攻撃を受けるかもしれない事態を想定した法律を国連の制裁行為に適用するのは無理ではないか」と追及したのに対して、安倍首相は直ちに周辺事態法を適用するとは言っていないが、日本が脅威を感じているのだから周辺事態法を適用しないと最初から考えるべきではないと反論した。

 しかも民主党の前原議員など一部の議員も周辺事態法の適用を主張しているという。脅威に対処するためには厳密な法律論は無用というなら、何のために法案の審議に時間をかけるのか、無駄ではないか。10月22日の民放テレビの「報道2001」でも石破 茂元防衛庁長官は日本が議長国として北朝鮮制裁決議をまとめたのであるから、日本が船舶の検査をするか米国の検査を支援しなければならないと発言している。議長国だからという発想も無茶苦茶だ。読売新聞も民主党が周辺事態法を適用できないというなら、対応できる法律を成立させてこなかった責任があるとして10月19日の社説で小沢代表の主張を批判している。政府の準備不足を野党の責任にするという理解できない論法だ。

 このような主張は、米国が日本周辺の事態を法律にいう「周辺事態」と認定して行動を開始したら、自動的に日本はそれを「周辺事態」として認めてもいいのではないかという風潮を生み出す。問題なのは、「周辺事態」の枠組みで行動する結果が北朝鮮の暴走を許し、日本の安全を脅かす本物の「周辺事態」を招く恐れがあることだ。

 ところで周辺事態法に規定している船舶検査活動は武力を行使することを認めていない。したがって、日本の海上自衛隊は北朝鮮の船舶を見つけても停船を命じ、検査をすると伝えるだけで武力を行使できないのであるから、米軍に情報を伝えるだけ。海上自衛隊の検査活動の限界を見越して北朝鮮の船舶が攻撃してくれば、そこから部分的な戦闘行為に突入することになり、本物の「周辺事態」に発展しかねない。

 しかも国連安全保障理事会の制裁決議の15項は全ての関係国が緊張を高めかねない行動の自制を求めているので、日本が制裁に突っ走った結果が武力衝突を招くようなことになると日本は非難される立場にもなる。そういう難しい問題を抱えた「周辺事態法」であるから簡単に適用できないことを忘れてはいけないのだ。


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