現在の低い金利はどう見ても正常な金利ではないので、日銀は金利を引上げ、正常化したいとの姿勢を変えていないようだ。福井日銀総裁の任期が来年春で終わるので、それまでには現在の短期金利0.5%を1%まで引き上げるのではないかとの見方もある。しかも金利を一挙に引き上げることができないので、今年の秋に0.25%、来年の春に0.25%の引き上げるとも予想されている。
そこで問題になるのは、引き上げの理由だ。これまで日銀は消費者物価の上昇をデフレ脱却の判断基準としてきたのに、これからの引き上げにこれまでと同じような説明ができるかどうかだ。前回金利を引き上げた直後の3月の消費者物価は上がっていない。さすがに政府は18年度中にデフレ脱却の公約は達成できなかったことを認めざるを得なかったのである。物価が伸びているように見えたのは、主として国際原油の値上がりの影響が物価に反映していたからだ。
こうなると、日銀は金利を上げる理由がなくなってしまう。しかし、ゼロ金利に近い低金をいつまでも続けるわけにはいかない。なぜなら低金利のために日本から資金が海外に流出しているし、低金利政策がドル高円安を誘導して日本の貿易黒字を拡大しているとの批判を招くことになりかねないからだ。
日本から資金が海外に流出しているのは、円キャリートレードと言われるもので、金利の安い円を借りて高金利の外貨での運用に充てるというものだ。この結果ますますドル高円安になるだけでなく、円が国内投資に回らずに海外に流出することになり、日本の国内経済拡大のチャンスが失われるのだ。それだけでなく、この円キャリートレードによる資金が投機資金となって国際金融市場をかく乱しているとの批判もあり、日本にとって好ましいことではない。
したがって日銀が金利を正常化するために1%まで金利を上げようとするならば、物価の上昇で説明をするのを断念するしかない。日本経済がデフレ脱却したと言えないにしても、低金利を続けることが日本経済にマイナスになるのであれば、それを避けるための金融政策をとるのは日銀の仕事であろう。そのことを日銀は明らかにすべきだ。物価の安定は日銀の仕事の全てではあるが、物価にも幅があるはずで、日本経済のマイナスを放置してはいけないという覚悟のもとに決断して欲しい。ただし、政府が緊縮財政を進めているなかでデフレ脱却を図るという矛盾したことを公約しているので、そのうえで金利を引き上げるという日銀の立場は難しい。これが政府の経済政策の実態だ。
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