財政破綻の罠から抜け出せるのか
第87号 (H21/6/13)

 政府は2001年に 基礎的財政収支の黒字化、つまり「政策に必要な財源を借金に頼らず確保する」 とする財政再建を表明して2011年には達成できると説明してきました。しかし、これまでの聖域なき歳出削減では国債が増え続くのを止めることができなくなったため、今度は国債が増えても財政再建が進んでいると説明できるような目標に変えます。そこで経済財政基本方針では、国民総生産に対する 債務 残高の比率を下げることを財政再建の新しい目標としたうえ、財政再建の目標年次を10年先に延ばして2020年としています。

 国債が増えても国民総生産が拡大すれば国債を返済していく能力は大きくなります。この考え方は、滝まことが日本経済復活の会の一員として今日まで一貫して政府への質問主意書を通じて経済政策の転換を求めてきた趣旨に沿うようにみえます。

 しかし、国民総生産を拡大するには難問があります。これまでのような超低金利のままであれば国民総生産を拡大するのは難しいからです。それは貿易や海外からの所得で国際収支が黒字になっても日本の金利が低ければ海外へ資金が流出するので国内に出回る資金が制約されて国民総生産は拡大しないからです。

 国際収支で資金の流れを確認すると、小泉内閣が成立した2001年から2008年までの8年間で87兆円の資金が海外へ流出超過しており、これが国民総生産が10年前の500兆円を下回る背景になっています。これに反し、経済成長が続いていた中曽根内閣の1985年から宮沢内閣の1992年までの8年間で7兆円が海外から国内に流入超過しており、資金が国内に流入超過すれば国民総生産が拡大することが分かります。

 さらに経済財政基本方針は、税の自然増収ではなく消費税の大幅増税を想定しているようですが、これでは国民総生産を拡大するというのは難しいでしょう。消費の拡大に向かう資金が制約されるからです。

 世界の国々は1980年代の後半に不動産や株式などの資産バブルの崩壊に対応するために一時的に金利水準を下げたものの、現在は5〜6%の金利水準に落ち着いています。それなのに、日本はいまだに超低金利が続いています。公的部門も民間部門も巨額の借金を抱えているので、利払いを抑えるには金利水準を低くするのが当然とされてきたからです。しかし、超低金利によって日本の資金が海外に流出し続ければ、国民総生産を拡大できません。このように財政破綻を避けようとして歳出を削減したことがデフレを長引かせて税収を落ち込ませたり、国債の金利負担を避けようとしたことが日本の資金を海外へ流出させるという罠になっています。この罠から抜け出す決断が必要なのです。

 政府は十分な景気対策により景気が回復すると金利上昇する(クラウディングアウトを言います)のではないかとの懸念で、景気が本格的に回復するのを嫌がっています。しかし、国を豊かにし国民を幸せにするのが政府の役割ですからこれは本末転倒と言うべきではないでしょうか。