今なぜ消費税率の引上げなのか
第89号 (H23/12/28)

 新年度2012年度の予算編成では、財源難のために国民年金(基礎年金)に対する国庫負担金の財源をめぐり難航したすえ、交付公債で措置することに落ち着きました。この国庫負担金の国の負担率を2009年度までに1/3から1/2へ引き上げることを義務化したにもかかわらず、引上げに見合うだけの財源を用意していませんので予算編成のたびに財源問題が浮上するのです。

 国庫負担率1/2が方向づけられたのは、2004年の年金法改正においてです。「百年もつ年金」にすると約束した年金改革です。これまでの経緯をみますと、まず、2004年度で用意したのは、年金課税の適正化による増収分272億円にすぎません。翌年度からは、定率減税の縮減・廃止による増収分をあてました。2005年度で1100億円、2006年度で2200億円ですから、制度改正で予定している負担金額には届きません。

 そこで2007年度税制改正大綱では、消費税を含む税制の抜本改革を実現させていくと明記されました。しかし、それも実現されず、定率減税の廃止による増加分1124億円をあてるだけで、国庫負担率を36.5%に引き上げるに留まりました。目標の50%にはほど遠く、これが小泉内閣の年金改革の実態だったのです。

 民主党政権になって鳩山内閣は、年金財政の危機的な状況を放置できず、2004年の年金制度改革で予定していた国庫負担率50%の実現に踏み切りました。2009年度で財政投融資特別会計の剰余金2.5兆円を繰り入れ、2011年度で鉄道建設機構・財政投融資特別会計・外国為替特別会計の剰余金を繰り入れたのです。埋蔵金の活用です。これにより法律の予定通りに国庫負担率50%には到達しました。しかし、年金財源は毎年拠出しなければなりませんから、恒久財源ではない埋蔵金は年金財源には不向きです。

 それでも不向きな埋蔵金を年金に財源として投入したのは、国民年金が破たんするからです。2004年の年金改革によれば、それまで国民年金の保険金が13,300円(年額)であったのを毎年280円引き上げ、2017年には最終目標の16,900円にする計画です。この保険金計算を裏づけるのが国庫負担率50%なのですから、これが予定通り達成できなければ国民年金の財政計算が成り立ちません。

 民主党政権は事業仕分けにより埋蔵金の発掘に取り組んできました。その成果を国民年金への負担金の財源に活用しましたし、東日本大震災の復旧・復興財源にもあててきました。しかし、埋蔵金がいつまでも無尽蔵ではないことは明らかですから、年金財源を恒久財源としての消費税の税率引上げに求めざるを得ないのです。もちろん、消費税の税率引上げは年金財源のみにあてられるものではありません。年金、医療、介護の3分野にとどまらず、子育ての分野の財源にもあてられます。

 小泉改革は、消費税の税率の引上げを避けるために社会保障経費を毎年2200億円削減しました。その結果、国民年金の信頼を損ない、医療・介護制度を崩壊させました。東日本大震災は、日本を変えました。小泉改革の失敗を繰り返す余裕はありません。

 そのうえ、ヨーロッパに広がりつつある国家債務の支払危機は、日本から遠い世界の話ではありません。GDP対比で世界一の膨大な政府債務をもつ日本は、急いで財政規律を確立させる必要もあります。消費税率の引上げは、民主党のマニフェストには反しますが、その決断をしなければならないときなのです。