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通算25号
平成19年4月19日

少年法改正と留岡幸助

 刑法41条には、「14歳に満たない者の行為は、罰しない」と定めているので、14歳以上は司法・家庭裁判所と少年院の領域で、14歳未満は福祉・児童相談所と児童自立支援施設の領域となっている。ところが、平成15年に長崎で12歳の少年が駐車場から4歳の幼児を突き落とす事件が発生(駿ちゃん事件)、翌16年には同じ長崎で11歳の女児が学校の教室に同級生を呼び出して刺殺するという事件(長崎女児殺害事件)が発生。

 あいつぐ重大事件をこのままにしておくことは,再犯防止、本人の立ち直り、被害者救済の観点から好ましくないとの声が大きくなった。俊ちゃん事件も長崎女児殺害事件も児童相談所はほとんど調査せずに家庭裁判所に送致したという。今回の少年法改正で触法少年(14歳以上であれば刑法に触れる行為をした少年)事件について警察の調査権を明確にしたのは、児童相談所が調査をしていないことの不備を埋めるものであろう。しかし、子供を扱うには場違いだ。改善すべきは児童相談所の調査能力の強化であり、家庭裁判所の調査能力を発揮させることであったはずだ。

 俊ちゃん事件も長崎女児殺害事件も加害者は児童自律支援施設に収容されたが、今回の少年法の改正は児童自立支援施設ではなく、少年院で集団的な矯正教育を受けさせるべきとの考えを前面に出している。しかし触法少年も虞犯少年(いわゆる非行少年)もほとんどは虐待(暴行、いじめ、養育放棄など)を受けた経験が背景にあることは共通しており、家庭的な環境で立ち直りを図るべきなのだ。それには少年院では無理で、児童自立支援施設でなければならない。しかも、全国に2か所ある国立の児童自立支援施設は強制的な措置をとれる閉鎖棟を備えて強制的な処遇もできるようになった。

 わが国で家庭的な環境で非行少年の立ち直りを図ろうとした先駆者は留岡幸助先生だ。明治32年11月、東京巣鴨に家庭学校を創立。入校生は8歳から16歳までの不良少年。教師夫婦が中心になって生徒の処遇にあたる。この形態はわが国の非行少年教育に大きな影響を与え、多くの感化院や孤児院が夫婦小舎制度をとることになった。

 留岡幸助先生の家庭学校は宗教を重んじ、普通教育と職業教育を重視。明治33年8月には内務省地方局の嘱託を命ぜられる。以後16年にわたり感化救済運動に携わり、その間アメリカのシカゴ少年裁判所、イギリスのレッドヒル感化学校、バーナード・ホーム、ドイツのラウエ・ハウス、メットレィ農業感化院、スイスのペスタロッチ学校を視察。その成果は大正3年、北海道家庭学校と呼ばれた感化農場に結実し、現在に及んでいる。少年法の改正は留岡幸助先生の原点に帰って見直すことが大切ではないだろうか。



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