フランスの選挙を訪ねて(2)高い投票率の背景
6月10日のフランスの下院議員選挙で過半数の票を獲得した候補者がいなかった選挙区で、6月17日に2回目の選挙が行われた。最終の議席数は、サルコジ氏の属する「国民運動連合」は45減らして314、ロワイヤル氏の属する社会党は36増やして185、バイル氏の「民主運動」は3、中道右派の「新中道」は22、共産党は6減らして15、その他38となった。
4月22日に行われたフランス大統領選挙では「民主運動」のバイル氏が健闘し決選投票には進めなかったものの3位に食い込んだ。しかし5月6日にサルコジ氏が大統領に当選すると「民主運動」の現職議員29人のうち22人が与党に鞍替えした。そのうえ党内の左右対立が伝えられた社会党は議席が半減するとみられていたので、「国民運動」は地すべり的に大勝するとの評判であった。
ところが「国民運動連合」は予想もしない後退、社会党は躍進という結果になった。その原因は「国民運動連合」の支持者が地すべり的大勝の評判に踊らされて投票所に行かなかったからだという。大統領選挙の2回目の投票はサルコジ氏とロワイヤル氏の接戦が予想されたこともあって投票率は85%を超えたのに、下院議員選挙の投票率は1回目も2回目もフランスでは珍しく60%であった。これは「国民運動連合」の支持者が棄権したことを示しているというのだ。実は、5年前の大統領選挙の1回目の投票で社会党のル・ペン氏が決選投票に進めなかったのはル・ペン氏の支持者に決選投票になるのだから、その時投票所に行けばいいという空気があったからだという。今回も似たような事態だ。
フランス始めヨーロッパ諸国では国政選挙の投票率が高い。それはいわゆる2大政党制ではなく、多党制であるので有権者が自分に合う政党を選べ、国政を動かしているとの実感をつかめるからだという。ということは有権者は国政を動かすために投票に行くのであって、結果を予則できるときには手を抜くのであろう。存亡の危機と言われていた社会党が躍進し、小さな政党も多党制の伝統を守ったのは支持者が必死になって投票を呼び掛けたからに違いない。
こうした多党制の伝統は、フランス革命以来ヨーロッパの民主主義は多数決の原理が常に成り立つとは考えず、少数の意見をどう取り込むかを民主主義の課題としてきたことによるものであろう。これに反して、政治学者やマスコミが英米流の2大政党制を讃美している日本の政治風土は吟味し直す時期に来ているのではなかろうか。「国民運動連合」の後退は支持者が大勝利の予想におぼれたのが原因だけではなさそうだ。多党制の一翼を担っていた「民主運動」の多くが与党に鞍替えしたこともあって、強気になった政府が2回目の投票の直前に付加価値税の5%引き上げを明らかにするという「民衆なき民主主義」に国民が危機感をもったことも影響しているように受け取れる。 |