日本の外交と安全保障の危機
外務省情報局長を経て防衛大学教授を勤められた孫崎享氏の「日米同盟の正体 迷走する安全保障」という最近の著書を読みました。
自民党内閣が変わるたびに日米同盟の堅持を表明してきましたが、孫崎氏が日米同盟を危機と捉えるのはどういうことでしょうか。それは、2005年10月29日、日本の外務大臣・防衛大臣とアメリカの国務長官・国防長官とが「日米同盟:未来のための変革と再編」という文書に署名したからです。
日米安全保障条約は「日本国の安全に寄与し、並びに極東における国際の平和及び安全の維持に寄与するため」という極東条項をもっているのですが、「未来のための変革と再編」では、日米同盟関係が「世界における課題に効果的に対処するうえで重要な役割を果たしている」として安全保障の対象が世界に拡大されたのです。そこに加わったのがオバマ大統領の就任演説による同盟の必要性で、日本に対するアフガニスタン、イラン、イラクへの積極的関与を求めてくるでしょう。日本がどう対応するのか国民的合意はありません。
安全保障条約が前提にしていた国際連合重視が消えて日米同盟が前面に出てきます。アフガニスタンへの自衛隊の派遣は、すでに形を変えてソマリア沖への海上自衛隊の派遣となって実現しました。しかし、アメリカにとっての関心はソマリア沖ではなく、あくまでもアフガニスタンへの自衛隊の派遣とみなければなりません。それだけにソマリア沖へ海上保安庁ではなく、自衛隊が派遣されたことの危うさがあります。
その反面、アメリカの北朝鮮に対する危機意識は薄いのです。北朝鮮が人工衛星と称してミサイル発射準備に入りましたが、アメリカの動きは鈍いようです。日本ではミサイル防衛が国防の主力になりつつありますが、現在問題になっている北朝鮮のミサイル発射準備を抑止するだけの効果はないようです。何のためのミサイル防衛でしょうか。
安全保障もアメリカ一辺倒では日本の国益を損なうというのが孫崎氏の意見です。日本は国際的に非難されていた国に対しても支援をしてきました。カンボジア、ミヤンマー、イランなどです。こうした姿勢が国際社会での日本の評価を高め、日本の安全保障になってきたことを日本人が忘れようとしています。自民党の主張により ODA 予算が毎年削られてきました。 ODA 予算のうち円借款の財源とされてきた郵便貯金が民営化によって財源も断たれてしまいました。こんなことを孫崎氏は指摘し、日本の政財界の主流がアメリカの要求を実現することを日本の国益とみなしていることに危機感を表明しています。

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