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通算35号
平成21年6月19日

DNA鑑定による冤罪(えんざい)

 2009年6月4日、東京高等検察庁は東京高等裁判所に対して菅家利和さんから出されていた再審開始請求に異論がないとの意見を出しました。菅家さんは20年前に起きた女児殺害事件(足利事件)で無期懲役の刑に服していたもので、冤罪であったことがDNAの新鑑定によって明らかになったからです。

 菅家さんが有罪となった決め手はDNA鑑定であり、再審開始の決め手になったのもDNA鑑定の結果です。今回の鑑定人となった大阪医科大学の鈴木廣一教授の鑑定書によれば菅家さんの有罪の決め手となった鑑定が行われたのは1989〜1990年で、「検査の方法」自体が「研究」レベルにあり、実用段階にはなく、刑事司法に適用する科学技術としては標準化が達成されていない時期です。それに対して、鈴木鑑定で用いた技術は研究レベルではなく、すでに標準化が達成された検査レベルにあることが信頼性の高い理由だということです。技術的に高い水準の検査陣により、残された遺留物には検査した33個のDNA型のうち26個が菅家さんのDNAと異なるという鑑定でした。

 菅家さんは有罪の判決が確定していたのに、不幸中の幸いと言えるのは、最初の鑑定に用いられた遺留物が保存されていたことです。この足利事件と同じような時期に同じような事件が飯塚市で起きました。女児2人が殺害された飯塚事件です。犯人とされた久間三千年さんもDNA鑑定が決め手になっていました。

 久間さんの弁護団の1人である岩田務弁護士によればDNA鑑定のやり直しにより再審請求の準備を進めていました。しかし、これまでの鑑定で遺留物は費消されて残っておらず再鑑定が不可能なために再審請求手続きに手間取っている間に昨年10月に死刑が執行されてしまいました。弁護団としては1審、2審、最高裁とも鑑定対象資料費消により再鑑定不可能なDNA鑑定は証拠能力なしとの主張をしてきましたが、採用されなかったとのことです。岩田弁護士によれば、飯塚事件のDNA鑑定は足利事件の鑑定以上に不出来だったということですから、死刑が執行されたと聞いて背筋の寒くなります。

 足利事件の菅家さんに栃木県の警察本部長が謝ったということですが、警察だけの問題ではありません。技術的に不十分な鑑定を信用してきた裁判所の問題であり、飯塚事件については再鑑定不可能な鑑定を証拠として死刑判決をしたというのであれば証拠の扱いの基本に立ち返って考え直す必要があります。飯塚事件の弁護団は再審の準備をしているとのことですが、最高裁は自主的に誤審がなかったのかどうか調査すべきです。さらに、飯塚事件は最後まで本人が犯行を否認しているのに最高裁判決が確定してから2年間という短期間で死刑の執行が行われたのを深刻に受け止める必要があります。最高検察庁は検証チームを発足させましたが、内閣も手続きが慎重であったのかどうかを検証すべきです。


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